①相続人から相続権を剥奪する制度です。
民法892条に「遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべきものを言う。
以下同じ)が、被相続人に対し虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人に
その他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。」との規定があります。
自分が死んでもコイツだけには一銭たりとも渡したくない!と考えても、
その人が遺留分がある相続人であれば一定の割合の遺産を相続する権利があります。
例えば配偶者と子供が相続人であれば、ともには遺産の1/4が遺留分です。
(子供が二人なら子供一人あたり1/8づつ)
遺留分あり | 配偶者(夫、妻) 直系卑属(子供、孫) 直系尊属(父母、祖父母) |
遺留分なし | 兄弟姉妹 |
妻と子供がいる場合、妻に一切の財産を相続させる、と遺言書に書いても、子供が納得しなければ
遺留分を請求できるので、遺言内容は実現されません。
つまり遺留分がある相続人に相続をさせたくない場合に使う制度、と言うことになります。
*遺留分がない相続人(兄弟姉妹)に相続させたくなければ遺言書にその旨記しておけば
不満に思っても何も請求できませんので、相続廃除する意味はないわけです。
②誰が廃除の手続きをするのか?
家庭裁判所に相続廃除の申し立てができるのは、被相続人(本人)のみです。
親父の財産を、親父の面倒を一切見なかった音信不通の兄貴に相続させたくないので
弟の自分が申し立てる、なんてことはできません。
③相続廃除できるのはどんな場合?
上記民法892条に、
・被相続人に対し虐待をした。
・被相続人に重大な侮辱を加えた。
・その他の著しい非行があったとき
と規定されています。これに該当すると家庭裁判所が認めた場合に相続廃除が可能となりますが
相続権は相続人にとって大変重要な権利ですので家庭裁判所は厳正に審査し、
簡単に認められるものではありません。
長男とは仲が悪いからとか、結婚後ろくに家に帰って来もしないから、とか言った理由では
認められません。
④相続廃除の手続き
家庭裁判所に相続廃除の申し立てを行い、認められたら市区町村役場に
推定相続人の廃除を届け出ることが必要です。
A.生前廃除
被相続人自身が家庭裁判所に相続廃除の申し立てをします。
B.遺言廃除
相続廃除の意思と理由を遺言書に記載しておきます。
実際の相続廃除の申し立ては遺言を実行する「遺言執行者」が行いますので
「遺言執行者」を遺言で定めておく必要があります。
⑤相続廃除の取り消し
相続廃除の場合と同じように、相続廃除の審判の取消しを申し立てることで
家庭裁判所に認められ相続廃除の手続きを行っても、取り消すことは可能です。
生前に行っても、遺言書に記載して死後に行うことも可能です。